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「小説:太宰治」著者:壇一雄 <冬島の読書感想文>

「小説」太宰治

著者 壇一雄

岩波書店出版 1964年初版

 

この本を手に取った理由は、とある文豪が出てくるソーシャルゲームにはまったからです。太宰治がでてきて、キャラと、自分が持っていた印象が結構違ったので、じゃあ当時付き合いのあった人から見た彼はどんな人なのだろう、と興味を持ったのが切欠でした。

壇一雄は太宰と知り合い、その師匠の井伏鱒二と面識を得て、井伏鱒二の師匠、佐藤春夫を師と仰ぎます。面白いエピソードが佐藤春夫という人自身は下戸なのに、彼がお酒を振舞ってくれたから「師匠って呼んでいいっすか!?」みたいなノリで弟子入りしたとかなんとか。佐藤春夫は弟子が3000人もいたというツワモノらしいので、そんな理由でも「また面白い奴が増えたなぁ」くらいの認識だったのでしょうか。来るもの拒まず、去る者追わず、敵と認識したらすっぱり切っちゃうのが佐藤流だったとかなんとか。

余談ですが、この本図書館で借りてきたんですけど、ゲームに出てくる文豪の本が少なかったです。佐藤春夫の本とか一冊もなかった!

さて、小説の中身ですが、これはもうなんというか…太宰治という人を通して壇一雄を知ることができる小説という一言に尽きます。

先程言ったように、壇一雄太宰治という知己を得たことによって師匠を得ます。この小説を読む限りでは太宰と共通の友人だったり悪友だったりも多かったようです。そんな色んな交友関係を築いても、師匠を得ても、小説として書きたいのだ太宰のことだった、というのが結構ぐっと来ました。

それというのも、彼は太宰治の文章を見て「彼こそが天才だ」という気持ちになったのです。これはどういう気持ちだったんでしょうね。適わないという諦めなのか、羨望なのか。それとも自分とは異次元の生き物を見た、ということなのか。

私から見れば太宰治というのは異次元の生き物そのものです。壇一雄とか、他の文豪ももしかしたらそうなのかもしれませんけれど…だって山手線で事故って退院した後三日三晩遊び歩くとかほんとよくわからない人多いじゃないですか。

その中でも太宰治は異次元っぷりが凄いと思うんです。人間失格も読みましたが、ほんと君は何をしたいんだ?と不思議に思いました。やることなすこと筋が通ってなくて、でも何かにあがいてるように見えるし、書く作品は結構私にとっては印象深いものが多かったです。

そんな異次元っぷりを壇一雄は「死ぬことで完結する文学を持っている」みたいに評価してるんですよね。そう言われてみればなるほど?と思えなくもないです。壇一雄から見た太宰はそうだった。そう書き記された小説をみて、なるほど、と思うみたいな。

解説されてようやく太宰の筋の通らなさが、太宰流には筋が通っていたんだな、と納得できます。

「別にお前らにあの天才が理解できなくったっていいけど、俺からはこう見えたんだよ!」っていう壇一雄の意思を感じる作品です。

 

それからもう一つ、率直な感想は「こんなロクデナシな奴らでも結婚できる時代だったんですね!!!」ということです。

いやぁ…手持ちのモノ全部質にいれられて、それでも帰りを待つ奥さん。それがいい妻と言われる時代だったんでしょうけども…すごいな、と。今なら三下り半叩きつけられて当然な気がします。そういう旦那を許容していた時代、と考えると不思議な感じがします。今の女性が恵まれているのか、それとも、この時代の女性が不憫だったのか。

 

想像するしか出来ない戦争という激動の時代の、変人とちょっと変な人の友情物語、そんな印象でしょうか。

太宰治ファンじゃなくても、読み物として面白い構成となっていると思います。

難点をあげるなら、壇一雄視点の話なので時系列が少しわかりにくいところでしょうか?本人も「なんか覚えてるのと違うんだけど、井伏さんが言ってる方が多分あってるよ」みたいなこと言ってましたしね。

 

・同じゲームをやっている人

太宰治に興味がある人

こんな人にはとてもおススメです。

逆に読書感想文とかの課題で興味ないけど太宰治って有名だし読んでみようかなぁくらいだったら読まない方がいい気がします…。もっと興味がでる本あるよ!これも読んでみたら楽しいけど、提出するような感想は書きにくいんじゃないかな!?