織田作之助の1940年に出た彼の五作目の作品で、彼が有名になるきっかけになったお話ですね。
某ゲームの初期文豪の一人、関西弁の可愛い彼の作品です。もともと方言萌えがある人種なのでとにかく可愛い。ゲームの中でも色んなエピソードが出てきましたが、とにかく好感度があがったのが彼でした。可愛い。
可愛い。
ちなみに私は「ふうふよきかな」と読んでました。「めおとぜんざい」です。
…知らなかった…。
・ざっくりあらすじ
ちょっと貧乏な家で育ったお転婆娘蝶子がなんでかはわからないけれど、ちょっとどもり癖のあるダメ男風変わりな男に惚れてしまい、苦労します。
周りから見ると「ありゃ女房が悪い」なんて言われたりもするけどそもそも女房になってないし、相手の男の父親にも認められていません。
蝶子がなんとか稼いでやりくりし、商売を始めますが一向にうまくいかず、扱う商売はなんかいか変わります。
でもなんやかんやあって肝っ玉も成長し、割れ鍋に綴じ蓋といった感じで夫婦善哉をいただく、そんなお話です。
お転婆でさっぱりとした主人公の蝶子は結構な器量よしで、しかも女手一つで稼ぐ腕も持っていますが、それでも男の趣味だけはダメだった、というような感じ。
・よくわからなかった単語
これに限らず文豪のお話って時代が違うせいと私の無教養のせいでなかなかわからない言葉が多いんです。
折角ブログに感想文書いてることだし見栄を張らずに調べてみました。
まむし
「あんじょうまむしてあるよ」というセリフがあったのですが、まむす…とは?となりました。たぶんまぶすという意味なのでしょうが…と思って調べてみたところ大体あっていました。
「まむしてあるよ」と言われたものはカレーの話だったのですが、調べたところそのカレーっていうのがこう…ドライカレー?に生卵がのっかってるものらしいんですよね。
それを、まぶして食べる、ということで。
ちなみに「異世界居酒屋のぶ」でも「まむし」がでてきましたがこれはうなぎの話だった気が…。まぶして食べてるものがまむし…郷土料理かな?これはぐぐってもわかりませんでした。
周旋
《名・ス他》
《名・ス他》交渉や商売などで、間にはいって、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと。また、物事を紹介し世話すること。
ジャッキタイヤ交換とかに使うやつ…ですよね。もちあげるやつ。でも、今回出てきたのはカミソリ屋を始めた時に扱う商品としてでてきました。…持ち上げないでしょ。そう思って調べてみたところどうやらバリカンの製品名みたいです。kotobank.jpここのニッポニカのところで大阪の人が試作した「ジャッキ」という言葉が出てくるのでおそらくこれでしょう。
ジレットとレザーこれも同じくカミソリのメーカー名朋輩同じ会社や主人の元で働く人。同じ先生に師事している人。同僚、同輩。
分からない言葉についてはこんな感じでした。
・この時代のお金の感覚は?
蝶子が一生懸命稼いで倹約して2年間でたまったのが【三百円】
(ただし、連れ合いが結構無駄遣いしたものとする)
その連れ合いが紹介してもらった仕事で稼いだ月給は13時間勤務で【二十五円】
この時代は一円がだいたい今の250円くらいだったそうなので
店を出そうと貯めた金額が75.000円
月給は6000ちょい
物価がかなり安かった、ということでしょうか?作中では月給二十五円で日に数円散財してくる連れ合いの様子も書かれていましたね。
物価がかなり安いことを考えるとかなりの散財をしていた、と考えていいと思います。…すっごい男に惚れたね蝶子さん。・感想
何故別れない!?
いやもうこれに尽きますね。稼ぐ手立てがあって、そこそこの器量よし。にもかかわらず惚れた男は結構年上散財癖もち、しかも妻も子供もいるという男。
現代なら当然別れる案件ですよ!
太宰治のときも思いましたがこの時代の女の人強いですね!
そして、男の趣味が悪い!!!!
強い女は総じてだめんずうぉーかーなんでしょうか…。
作中で蝶子の苦労をメインに書かれていましたが、一方で連れ合いのうだつがあがらないのは蝶子のせいだというような書かれ方もしていました。
納得いきませんが当時の世間様から見ると「男のうだつがあがらないのは女のせい」っていうのは割とあることなんでしょうね。
なんでやねん!という気持ちでいっぱいになりますが。
そんな散財癖、妻子ありの男でも放り投げなかった蝶子。
これが…愛情……。
ではなく、意地だったんじゃないかと思うんですけどね、個人的には。
いや、誰だって自分が手に取ったものが粗悪品って思いたくないじゃないですか。
そして蝶子くらいの技量があれば男を立ててやることだってできるわ!ってなるのはわかる気がします。
ジジ抜きやってるときにひいたカードがジジでした、なんて皆思いたくないじゃないですか。
そういうことなんだと思います。
それでもなんやかんや、ちょっと歳を食って、お転婆美少女だった蝶子もお尻のおっきなおばちゃんになって
夫婦で善哉を食べる。
そういうお話です。
もうね、途中で「蝶子―!!俺だーー!!別れろー!!!!」
って言いたくなりましたよ。
別れ話出た時も「何故だ!!何故頷かないのだ蝶子!!」ってなりましたよ。
でもまぁ…幸せって人それぞれですし、めちゃくちゃ苦労したとしても、蝶子本人が納得してるならそれでいいんだろうなぁって。
とてもやきもきさせられましたが、そういうもんなんでしょう!
お幸せにね!って思える作品でした。
オダサクの「人情を描くのが得意」「庶民の人生の機微を巧みに描く」なんていうキャッチフレーズにうんうんと首がもげるほどにうなずけるお話でした。
ちなみに短編なので結構さっくり読めます。
ではでは。
2018.01.11追記
全然意識していなかったんですが、この感想文かいた日って善哉忌だったんですね。
織田作之助がなくなった日。
なんというか…この日にこの感想文をあげた偶然もたのしいなって思います。