今回の読書はオダサクの世相です。
私が読んできたなかで、たぶん初めて主人公が「オダサク」であるというものです。
今まで読んできた檸檬や美しい村↓
とかは主人公が作者で、実体験をもとにした創作だったと思うんです。
私が今まで読んできたオダサクの作品は全部創作だったので
少し新鮮な気持ちで読めました。
・あらすじ
「オダサク」が何処かの店で原稿をしていると、同じようにフラりと現れた客が煙草を買わないか、と持ちかけてきた。
ながったらしい口上を要約すると、自分は金はないが、良いものは闇市で入手できた。ということだった。
だがあいにくとそのときのオダサクも当てにしていた印税をもってきてくれる男が雲隠れしてしまって金がなかった。
物売りはすごすごと引き下がり、ふとオダサクは「ダイス」というバーのマダムをお金の話から連想した。
マダムから、阿部定、静子と次々に関わった、あるいは小説の題材にしようとした女性を思い出す。その傍らには家人、同じ女性でもそれぞれ違う個性をオダサクの視点でえがきつつ、当時話題になった阿部定のことを、オダサクの視点で書き綴る。
・わからなかった言葉
生硬
態度や表現などが未熟でかたい感じがするさま。
壕舎
敵の襲撃に備えて地中に作った部屋。防空壕。
ひさぐ
売る。
風俗壊乱
社会の良い風俗や習慣を破壊し、混乱させること。
うらぶれた
陰りが見える。衰えが見える。
都々逸
口語による定形詩。七・七・七・五の音で詠む。
ルンペン
浮浪者。失業者。
退廃的なこと。非社会的で倦怠的な生活を送るさま。
ズルチン
昔使われていた人工甘味料。今は使用禁止になっている。
ポン引き
路上での勧誘行為。
コハゼ
旅の足首の後ろについている小さな金具のこと。
・感想
小説家と女性は切っても切れないのだなぁ、と。
阿部定事件はかなり有名ですよね。
といっても私はあまり知らないのでこれを期に調べてみました。
こちらのサイトさんが詳しかったです。
日本恋愛史における阿部定事件ー「私は猟奇的な女」ですか「純愛の女」ですか | 前坂俊之オフィシャルウェブサイト
割りと想像が膨らむきわどい部分もあるので青少年におすすめします(笑)
どうぞ、想像力を膨らませてください!
オダサクと女性といった観点で見るとかなり面白い作品だと感じました。
彼が女性をどのように見ているのか。
彼の周囲の男性と、女性の姿とか。
作中で「オダサクの作品には若さがない」という評価が出てきます。
どの辺がそうなんでしょう。
ただ、言われて思ったのはオダサクの作品を初めて読んだときに
人の情緒とでも言うんでしょうか。
そう言ったものにとても精通しているような感じを受けました。
それが、年齢を重ねているような印象に映るんでしょうかね。
今まで読んできた話が、なんらかのものから着想を得たにせよ
「起承転結のあるがっつり小説」
なのに対して
今回の世相という作品は
「オダサク視点の話」
なので主観が見えてとても面白いです。
小説家織田作之助の作品を読むのであれば
「夫婦ぜんざい」や三部作をおすすめしますが
織田作之助を知りたい!という方はこれもおすすめですね。
あと青少年も読みましょう(笑)
ではでは